ピザコネクション（Pizza Connection Trial）シチリア・マフィアとアメリカン・マフィアが絡んだ、麻薬の流通に利用されていた複数の個人経営のピザパーラーのフロント企業を巡る裁判

ピザ・コネクション裁判（Pizza Connection Trial）

　シチリア・マフィアとアメリカン・マフィアに対する刑事裁判で、米国ニューヨーク市のニューヨーク南部地区連邦地方裁判所で行われたもの。

　この裁判は、麻薬の流通に利用されていた複数の個人経営のピザパーラーのフロント企業を巡る裁判であり、1975年から1984年の間に、これらの企業が南西アジアから米国に

　　　16億5000万米ドル相当のヘロイン

を輸入していたことが争点となった。

　裁判は1985年9月30日から1987年3月2日まで続き、18人の有罪判決が下された。

　1987年6月22日に判決が言い渡された。

　約17か月続いたこの裁判は、当時のアメリカ合衆国司法史上最長の裁判となった。

　1970年代後半、パレルモのマフィア

　　　ヌンツィオ・ラ・マッティーナ

　　　トマゾ・スパダロ

　　　ジュゼッペ・サヴォカ

は、他のマフィアファミリーのために、スイスでトルコ人密売人

　　　ヤサル・アヴニ・ムスッルル

から大量のモルヒネを購入し、海路または陸路でパレルモとその周辺地域に輸送した。

　当時のパレルモとその周辺地域では、すべてのファミリーが共通の違法ヘロイン精製所が多数稼働していた。

　1980年、捜査官は初めて、プンタ・ライジのピライネート地区とトラビアにそれぞれ1つの精製所を発見した。

　これらの精製所は、マフィアの

　　　ジェルランド・アルベルティ

が経営しており、アルベルティは、彼の下で働いていたマルセイユ出身の化学者3人とともに逮捕された。

　1982年には、パレルモのメッシーナ・マリーン通りで、マフィアの

　　　ピエトロ・ヴェルネンゴ

が経営する別の精製所が発見された。
　この裁判は、マフィアが運営する組織を巡るものであった。

　この組織は、シチリア産のヘロイン、トルコと南西アジアから購入したモルヒネ、南米産のコカインを精製加工した。

　最終的には米国内で個人経営のピザ店を隠れ蓑にして流通させ、資金は米国内外の複数の銀行や証券会社を通じて洗浄していた。

　この組織は、1975年から1984年の間に、米国北東部と中西部に16億5000万米ドル相当のヘロインを輸入したと推定されている。

　検察当局の

　　　リチャード・A・マーティン

　　　ルイス・J・フリー

　　　ロバート・スチュワート

　　　ロバート・B・バックナム

　　　アンドリュー・C・マッカーシー

からなるチームは、約1年間にわたり、数百人の証人、盗聴、数千点の文書を収集し、その完了には数百万ドルの費用を投入した。

　1984年4月8日、スペインのマドリードでシチリア・マフィア委員会に所属していた

　　　ガエターノ・バダラメンティ

とその息子

　　　ヴィト・バダラメンティ

がピエトロ・アルファーノと共に逮捕された。

　その後、米国、イタリア、スイス、スペインで共謀者の逮捕が続き、11月15日に彼らは米国に引き渡された。

　その翌日、連邦捜査局はニューヨーク市で約30人を逮捕し、武器や麻薬を押収した。

　これらの証人の一人は、シチリア・マフィアのペンティートである

　　　トマソ・ブシェッタ

が含まれている。

　彼は既にマキシ裁判の準備として、イタリアの裁判官

　　　ジョヴァンニ・ファルコーネ

に情報を漏らしていた。

　1984年12月、ブシェッタはアメリカ合衆国に引き渡され、ピザ・コネクション裁判でアメリカ・マフィアに対する新たな情報開示と引き換えに、政府から新たな身元、アメリカ国籍、そして証人保護プログラムへの参加を認められた。

　もう一人の証人は、シチリア・マフィアのペンティートである

　　　サルヴァトーレ・コントルノ

であった。

　彼もブシェッタに倣い、1984年10月から協力関係を築き、マキシ裁判でも証言を行った。

　1976年から1981年にかけて「ドニー・ブラスコ」という偽名を使ってボナンノ一家に潜入した元FBI潜入捜査官

　　　ジョセフ・D・ピストーネ

も裁判で証言した。
　逮捕者のうち、22人のシチリア生まれの被告

　・ガエターノ・バダラメンティ（Gaetano Badalamenti）

　・サルヴァトーレ・カタラーノ（Salvatore Catalano）
　・ジョゼフ・ランベルティ（Joseph Lamberti）
　・サルヴァトーレ・マズルコ（Salvatore Mazzurco）
　・サルヴァトーレ・ランベルティ（Salvatore Lamberti）
　・ジョバンニ・リガンマリ（Giovanni Ligammari）
　・バルダッサーレ・アマト（Baldassare Amato）
　・ヴィンチェンツォ・ランダッツォ（Vincenzo Randazzo）
　・ピエトロ・アルファノ（Pietro Alfano）
　・エマヌエーレ・パラッツォーロ（Emmanuele Palazzolo）
　・サミュエル・エヴォラ（Samuel Evola）
　・ヴィト・バダラメンティ（Vito Badalamenti）
　・ジュゼッペ・トルピアーノ（Giuseppe Trupiano）
　・ジュゼッペ・ヴィターレ（Giuseppe Vitale）

　・ロレンツォ・デバルド（Lorenzo DeVardo）
　・ジョバンニ・カンギアロージ（Giovanni Cangialosi）
　・サルヴァトーレ・サラモーネ（Salvatore Salamone）
　・サルヴァトーレ・グレコ（Salvatore Greco）
　・フランク・カストロノヴォ（Frank Castronovo）
　・ガエターノ・マッツァーラ（Gaetano Mazzara）
　・フランチェスコ・ポリッツィ（Francesco Polizzi）
　・フィリッポ・カサメント（Filippo Casamento）

が1985年9月30日に始まった裁判に立った。　

　ブシェッタは、被告人と麻薬との直接的な関連性を示唆しなかった。

　コントルノは、シチリア島で

　　　カルロ・カストロノーヴォ

の従兄弟である被告人

　　　フランク・カストロノーヴォ

が、米国でピザ店を隠れ蓑として利用していたと証言した。

　コントルノはまた、1980年にバゲリアでヘロインに関する会合を持ち、そこで

　　　カストロノーヴォ

が他の3人の被告人（サルヴァトーレ・カタラーノ、ガエターノ・マッツァーラ、サルヴァトーレ・グレコ）と一緒にいるのを目撃したと証言した。

　ピストーネは、ドミニク・ナポリターノが率いるボナンノ派が、サルヴァトーレ・カタラーノを含むシチリアの派閥と同盟を結んだと聞かされたと証言した。
　裁判の過程で、証拠隠滅を図った暗殺等が実行され

　　　ガエターノ・マッツァーラ

は殺害され、

　　　ピエトロ・アルファーノ

は重傷を負った。

　1987年3月2日、22人のうち2人が軽微な通貨違反で有罪を認めた。

　残りの19人のうち18人は国際麻薬組織の運営で有罪判決を受けた。

　ただ、ヴィト・バダラメンティは唯一無罪となった。

　判決は1987年6月22日、ピエール・レヴァル判事によって言い渡され、被告のうち5人は懲役45年の判決を受け、他の13人は麻薬密売への関与の罪で最高15年から40年の懲役刑に直面した。

　ガエターノ・バダラメンティは懲役45年と罰金12万5千ドルを宣告され、スペインから送還された際には最長30年の刑期が定められていた。

　そのため、もし30年生き延びれば釈放されることになった。

　サルヴァトーレ・カタラーノも懲役45年と罰金115万ドル（2024年時点で415万ドル相当）を宣告された。

　また、賠償金100万ドル（2024年時点で280万ドル相当）の支払いを命じられた。

　サルヴァトーレ・マズルコは懲役35年、罰金5万ドル（2024年で13万8000ドル相当）を宣告された。

　また、賠償金50万ドル（2024年で138,000ドル相当）の支払いを命じられた。

　サルヴァトーレ・ランベルティは懲役20年、罰金5万ドル（2024年で13万8000ドル相当）を宣告された。

　また、賠償金50万ドル（2024年で138,000ドル相当）の支払いを命じられた。

　ジュゼッペ・ランベルティは懲役35年、罰金15万ドル（2024年で41万5000ドル相当）を宣告された。

　また、賠償金50万ドル（2024年で138,000ドル相当）の支払いを命じられた。