ミット・ロムニー（Mitt Romney）ベインキャピタルの共同設立者

ウィラード・ミット・ロムニー（Willard Mitt Romney）

　　　1947年3月12日生まれ

　米国の実業家、元政治家である。

　2019年から2025年までユタ州選出のアメリカ合衆国上院議員を務めた。

　2003年から2007年まではマサチューセッツ州の第70代知事を務めている。

　2012年のアメリカ合衆国大統領選挙では共和党の候補者であった。

　ミット・ロムニーは、元ミシガン州知事の

　　　ジョージ・W・ロムニー

の息子である。

　ミシガン州ブルームフィールドヒルズで育ち、モルモン教の宣教師として2年以上フランスで過ごした。

　1969年にアン・デイヴィスと結婚し、5人の息子がいる。

　成人後も末日聖徒イエス・キリスト教会（LDS教会）に熱心に所属し、ワードのビショップを務めた。

　後にボストンとその郊外の多くの地域を担当する

　　　ステーク会長を

務めた。

　1971年までに、彼は両親の政治運動に参加していた。

　1971年、ブリガムヤング大学（BYU）で英文学の学士号を取得した。

　1975年にはハーバード大学で法務博士（JD）と経営学修士（MBA）の学位を取得した。

　その後、経営コンサルタントとなり、1977年にボストンの

　　　ベイン・アンド・カンパニー

に入社した。
　ベインの最高経営責任者（CEO）として、彼は会社の財政危機からの脱却に貢献した。

　1984年には、スピンオフ企業である

　　　ベインキャピタル

を共同設立し、その経営を担った。

　このプライベートエクイティ投資会社は、後に全米最大級の規模に成長した。

　ロムニー氏はベインキャピタルと末日聖徒イエス・キリスト教会での役職を退いた後、1994年にマサチューセッツ州で共和党上院議員候補として出馬した。

　ただ、現職のテッド・ケネディ氏に敗れた。

　その後、ベインキャピタルに復帰した。

　数年後、当時経営難に陥っていた

　　　2002年ソルトレークシティー冬季オリンピック組織委員会

の会長兼CEOとして成功を収め、政界への再出発を果たしました。

　2002年にマサチューセッツ州知事に選出されたロムニー氏は、州レベルの補助金と個人の保険加入義務を通じて、ほぼすべての人に医療保険へのアクセスを提供する医療改革法（通称「ロムニーケア」）の策定に尽力し、後に署名した。

　また、支出削減、手数料の引き上げ、法人税の抜け穴の解消などにより、12〜15億ドルと予測されていた財政赤字の解消を主導した。
　ロムニーは2006年の大統領選では再選を目指さず、2008年の大統領選挙で共和党候補指名争いに専念したが、ジョン・マケイン上院議員に敗れた。

　4年後、ロムニーは再び大統領選に出馬した。

　2012年の大統領選挙で共和党候補となり、主要政党の候補となった初の末日聖徒イエス・キリスト教会会員となった。

　しかし、この選挙では

　　　バラク・オバマ大統領

に敗れた。ユタ州に居住地を戻した後、2018年に上院議員選挙に出馬した。

　共和党候補指名と本選挙で勝利したロムニーは、近代アメリカ史上初めて、複数の州で知事と上院議員に選出された人物となった。
　一般的に穏健派またはよりネオコン寄りの共和党員と考えられているロムニーは、

　　　ドナルド・トランプ大統領

の初の弾劾裁判で有罪に賛成票を投じた唯一の共和党員であった。

　また、同党の大統領の罷免に賛成票を投じた初の上院議員となった。

　ロムニーは2021年のトランプ大統領の2回目の裁判でも有罪に賛成票を投じた。

　彼はブラック・ライブズ・マターの抗議者と共にデモ行進した。

　ケタンジ・ブラウン・ジャクソンの最高裁判事就任承認に投票し、銃規制措置を支持した。

　2016年、2020年、2024年の大統領選挙ではトランプ大統領に投票しなかった。

　彼はイラン、中国、ロシアとの関係で長年強硬な姿勢をとっており、議会ではイスラエルの最も熱心な支持者の一人だった。

　彼はトランプ支持者から名ばかりの共和党員だと非難されている。

　2023年、ロムニーは2024年の再選には立候補しないことを発表し、2025年に任期が満了すると上院議員を引退した。
　ロムニーは、1947年3月12日、ミシガン州デトロイトのハーパー大学病院で自動車メーカー

　　　アメリカン・モーターズ

の重役

　　　ジョージ・W・ロムニー

と女優兼主婦の

　　　レノア・ロムニー（旧姓ラフォン）

のマーゴ、ジェーン、スコットという3人の兄姉の末弟として生まれた。

　母親はユタ州ローガン出身で、父親はアメリカ人の両親のもと、メキシコのチワワ州にあるモルモン教徒の居住地で生まれた。

　主にイギリス系だが、スコットランド系とドイツ系の血も引いている。

　末日聖徒イエス・キリスト教会の5代目会員である彼は、マイルズ・パーク・ロムニーの曾孫であり、モルモン教が設立されてから10年以内に改宗したマイルズ・ロムニーの玄孫にあたる。

　もう一人の高祖父、パーリー・P・プラットは初期の教会の指導に貢献した。
　両親は、家族の友人である実業家の

　　　J・ウィラード・マリオット

と、父のいとこで元シカゴ・ベアーズのクォーターバックだった

　　　ミルトン・「ミット」・ロムニー

にちなんで、ミットと名付けた。

　ロムニーは幼稚園に入るまで「ビリー」と呼ばれていたが、その後「ミット」という呼び名を好むようになった。

　1953年、一家はデトロイトから裕福な郊外ブルームフィールド・ヒルズに引っ越した。

　翌年、父はアメリカン・モーターズの会長兼CEOに就任し、会社の倒産を回避して黒字化に成功した。

　1959年までに、父は新聞やテレビで全国的に知られる人物となり、ミットは父を崇拝していた。

　ロムニーは、7年生まで公立小学校に通い、その後、自宅から数マイル離れた高級男子私立予備校であるクランブルック校に入学した。

　数少ないモルモン教徒の生徒の一人となった。

　同校の生徒の多くは、彼よりもさらに恵まれた環境の出身だった。

　特に運動が得意というわけではなく、学業でも優秀な成績を収めたわけではなかった。

　1962年にミシガン州知事選で勝利した父親の選挙運動に参加した後に知事事務所でインターンとして働いた。

　新しく当選した父親が州議会議事堂でほとんどの時間を過ごすようになったため、ロムニーはクランブルックに居を構えた。
　クランブルック高校では、ロムニーはアイスホッケーチームの監督を手伝い、応援団にも参加した。

　高校4年生の時には、クロスカントリーランニングチームに参加した。

　自身が立ち上げた応援団であるブルーキークラブを含む、11の学校組織や学校クラブに所属した。

　高校最終学年の間、彼の学業成績は向上したものの、優秀とは程遠いものだった。

　高校4年生の3月、彼はアン・デイヴィスと交際を始めた。

　彼女はクランブルックの姉妹校である私立キングスウッド・スクールに通っていた。

　2人は彼が1965年6月に高校を卒業する頃に非公式に婚約した。
　ロムニーは1965年から1966年にかけてスタンフォード大学に通った。

　彼は当時サンフランシスコ・ベイエリアで形成されていた1960年代のカウンターカルチャーには関わっていなかった。

　ベトナム戦争へのアメリカの介入に反対するグループが1966年5月、徴兵検査に反対するデモのためスタンフォード大学の管理棟で座り込みを行った。

　ロムニーもこのグループに対する抗議活動に参加した。

　1966年7月、彼はモルモン教の宣教師としてフランスで30ヶ月間の滞在を開始した。

　これは彼の家族における伝統的な通過儀礼であった。

　彼はル・アーブルに到着し、そこで貧弱な環境の狭い宿舎で生活し、飲酒、喫煙、デートは厳格に禁止されていた。

　平均して、モルモン教の宣教師は一人当たりそれほど多くの改宗者を獲得できず、ロムニーも例外ではなかった。

　彼は後に、宣教活動全体で10人から20人ほどの改宗者を獲得したと推定している。

　彼は当初士気が低下し、後に「自分がやろうとしていたことのほとんどが拒否された」唯一の時だったと回想している。
　ロムニーは、多くの家庭を訪問し、繰り返し訪問を許可されたことで、すぐに伝道部内で認められるようになった。

　彼は1968年初頭にボルドーでゾーンリーダーとなり、その後まもなくパリの伝道部会長の補佐となった。

　パリ滞在中、ロムニーは伝道本部に数ヶ月滞在し、国内の他の場所で経験した住居よりもはるかに快適な邸宅で過ごした。

　フランス人がベトナム戦争におけるアメリカの役割に反対を表明したとき、ロムニーは彼らと議論した。

　彼に向かって怒鳴り声を上げ、ドアをバタンと閉めた人々は、彼の決意を強めるだけであった。
　1968年6月、南フランスで自動車を運転中に他の車に衝突され、ロムニーは重傷を負った。

　この事故で、同乗者の一人、伝道部会長の妻が亡くなった。

　その後、ロムニーは、1968年5月のゼネストと学生蜂起、そしてこの自動車事故の後、士気が低下し混乱していた伝道部の共同会長に就任した。

　ロムニーが他の伝道部員を鼓舞したことで、伝道部は年間200人の洗礼という目標を達成した。

　これは10年間で最多の数字となった。

　1968年12月の任期終了までに、彼は175人の伝道者を監督していた。

　ロムニーはそこでの経験から、フランスとその人々への生涯にわたる愛情を育み、フランス語を流暢に話せるようになったという。

　帰国後初めて会ったロムニーとアン・デイヴィスは再会し、結婚することにした。

　結婚式の前に、ロムニーはユタ州に移り、アンが在学していた

　　　ブリガムヤング大学

に入学した。

　二人は1969年3月21日にブルームフィールドヒルズで民事婚を挙げ、翌日、ユタ州に飛び、ソルトレーク神殿でモルモン教の結婚式を挙げた。

　アンは彼が留守の間に改宗していた。
　ロムニーは父親が1968年の大統領選で敗北した際にその運動に参加していたことを知り、驚いた。

　ジョージは当時、リチャード・ニクソン大統領の内閣で

　　　住宅都市開発長官

を務めていた。

　1970年6月、閣僚の子供たちの新聞記事で、ミットはアメリカのベトナム戦争への関与は誤りだったと述べた。

　「ベトナムへの介入が政治的失策でなければ、何が失策なのか分からない」と述べつつも、ニクソンが継続していたカンボジア侵攻は戦争終結に向けた真摯な試みとして支持した。

　ベトナム戦争のためのアメリカ軍徴兵中、ロムニーは2S学生徴兵猶予を2回申請し、認められた。

　その後、宣教師としてフランスに滞在していた際に4D大臣徴兵猶予を1回申請し、認められた。

　その後、さらに2回学生徴兵猶予を申請し、認められた。

　それがなくなると、彼は1969年12月のドラフト抽選で300番を引き、ドラフトに選ばれないことが確定した。
　文化的に保守的なBYUに在籍していたロムニーは、当時の激動の多くから距離を置いていた。

　 彼はクーガー・クラブの後援団体の会長に就任し、学業にも新たな規律を身につけた。

　大学4年生の時には休学し、母親の落選した上院選挙運動の運転手兼先遣隊として働きいた。

　両親はミシガン州の83郡すべてを一緒に訪れた。

　ロムニーは1971年にBYUを卒業し、英語学の学士号とGPA3.97を取得した。

　彼は人文科学部とBYU全体に向けて卒業式のスピーチを行った。

　ロムニー夫妻の長男タガートは、1970年に生まれまた。

　当時、夫妻はBYUの学部生で、地下のアパートに住んでいた。

　彼らの息子マシューは1971年に生まれ、ジョシュアは1975年に生まれた。

　ベンジャミン（1978年）とクレイグ（1981年）はロムニーがキャリアをスタートさせた後に生まれた。
　ロムニーはビジネスの世界へ進みたかったが、父親は、たとえ法律の実務に携わることはなくても、法務博士号はキャリアにとって価値があると助言した

　その結果、彼はハーバード大学ロースクールとハーバードビジネススクールが連携して新たに創設された4年間の法務博士号/経営学修士号共同プログラムに入学した。

　彼はビジネススクールの実用的でデータ主導のケーススタディ方式の教育にすぐに適応した。

　マサチューセッツ州ベルモントの家にアンと2人の子供と住んでいた彼の社会経験は、ほとんどのクラスメートとは異なっていた。

　 彼は非イデオロギー的で、当時の政治問題に関与しなかった。

　ロムニーは1975年にハーバード大学を卒業した。ビ

　ジネススクールのクラスで上位5％の成績で卒業したことでベイカー奨学生に選ばれた。

　ロースクールのクラスで上位3分の1の成績で法学博士号を優秀な成績で取得した。
　ハーバード大学で法務博士（JD）と経営学修士（MBA）を取得した後、ロムニー氏はミシガン州の司法試験に合格した。

　ただ、法律ではなくビジネスの道に進むことを決意した。

　彼は複数の大企業からスカウトを受けましたが、

　　　ボストン・コンサルティング・グループ（BCG）

に入社した。

　様々な企業で経営コンサルタントとして働くことが、将来の最高経営責任者（CEO）の職に就くための準備になると考えた。

　1970年代に大企業に直接就職するのではなく、コンサルティング業界を選んだ優秀な卒業生の波に乗ったロムニー氏は、法律とビジネスの教育が仕事に役立ったと感じた。

　彼は成長シェア・マトリックスなどのBCGの原則を適用し、経営陣は彼に明るい将来があると見なした。

　BCGでは

　　　ベンヤミン・ネタニヤフ氏

の同僚であり、50年以上にわたる友情を築きました。

　1977年、彼はボストンの経営コンサルティング会社、

　　　ベイン・アンド・カンパニー

に採用された。

　同社は数年前にビル・ベインと数人のBCG元社員によって設立された。

　ベインは後に30歳のロムニーについて、「彼は10歳くらい年上の男のような自信に満ちていた」と述べている。

　他のコンサルティング会社が提案を出した後、すぐに立ち去るのとは異なり、ベイン・アンド・カンパニーはクライアントの事業に深く関わり、変革が実行されるまで共に歩んだ。

　ロムニーは1978年に同社の副社長に就任した。

　モンサント社、アウトボード・マリン社、バーリントン・インダストリーズ、コーニング社などのクライアントを担当した。

　数年後、同社は彼を最高のコンサルタントの一人とみなすようになった。

　実際、クライアントはより年上のパートナーよりも彼を好むこともあった。
　この時期に起きた2つの家族間の出来事が、後にロムニーの選挙運動中に表面化した。

　1981年、州立公園のレンジャーがロムニーに対し、彼のモーターボートのナンバープレートが見づらいため、湖に持ち込めば50ドルの罰金を科すと告げた。

　しかし、ナンバープレートの提示に納得できず、家族旅行を続けたいロムニーは、罰金を支払うと言いながらボートをそのまま持ち出した。

　レンジャーは彼を治安紊乱行為で逮捕したが、数日後に容疑は取り下げられた。

　1983年、12時間の家族旅行中、彼は愛犬を車の屋根に取り付けた風防付きキャリアに入れ、犬が下痢を起こしたため、車とキャリアを洗車した。

　特にこの犬の事件は、後にロムニー批判者や政敵のネタとなった。
　1984年、ロムニーはベイン・アンド・カンパニーを退社した。

　その後、スピンオフしたプライベート・エクイティ投資会社

　　　ベイン・キャピタル

の共同設立者兼CEOに就任した。

　当初、ビル・ベインからの新事業の責任者就任の申し出を断っていたが、ベインが複雑なパートナーシップ構造の条件を見直し、ロムニーに金銭的・職業上のリスクが及ばないようにした。

　ベインとロムニーは、7人の従業員を抱える新事業の立ち上げに必要な3,700万ドルを調達した。

　ロムニーは社長とマネージング・ゼネラル・パートナーを兼任した。

　彼は会社の唯一の株主であったが、出版物ではマネージング・ディレクターまたはCEOとも呼ばれていた。

　ベイン・キャピタルは当初、ベンチャーキャピタル投資に特化していた。

　ロムニーは、どのパートナーでもこれらの潜在的な機会の1つを拒否できるシステムを構築し、非常に多くの弱点を個人的に見ていた。

 このため、最初の2年間はベイン・キャピタル投資がほとんど承認されなかった。

　 会社の最初の大きな成功は、1986年に

　　　ステープルズ社

の設立を支援するための投資であった。

　創設者のトーマス・G・ステンバーグがオフィス用品の市場規模をロムニーに納得させ、ロムニーも他の人を説得した後のことである。

　ベインキャピタルは最終的に投資のほぼ7倍の利益を上げ、ロムニーは10年以上ステープルズの取締役を務めた。
　ロムニーはすぐにベイン・キャピタルの重点を新興企業から比較的新しい事業であるレバレッジド・バイアウトへと転換した。

　これは、主に銀行機関から借り入れた資金で既存企業を買収し、新たに買収した企業の資産を担保に企業価値の向上を図り、その後、通常は数年以内に価値がピークに達した時点で売却するというものである。

　ベイン・キャピタルは初期のレバレッジド・バイアウトの多くで赤字を出した。

　ただ、その後、大きな利益を生む取引を見つけた。

　同社は、アキュライド・コーポレーション、ブルックストーン、ドミノ・ピザ、シーリー・コーポレーション、スポーツオーソリティ、アーティザン・エンターテインメントに加え、工業および医療分野のあまり知られていない企業にも投資または買収した。

　同社の利益の多くは比較的少数の取引から得られており、ベインキャピタル全体の成功率と失敗率はほぼ半々であった。
　ロムニー自身が発見した投資機会はほとんどなく、発見した投資機会も会社に利益をもたらさなかったことが多かった。

　その代わりに、彼は他の人が提案した可能性のある取引のメリットを分析し、承認されたら参加する投資家を募集することに集中した。

　 ベインキャピタルでは、ロムニーは取引による利益を社内に広く分配して社員のモチベーションを高め、自分のために残すのは10%未満にすることが多かった。

　データに基づいて行動する彼は、取引を進めるかどうかを徹底的に分析する際に、しばしば反対意見を述べる役割を担った。

　彼は、当初損失を出したベインキャピタルのヘッジファンドを解散したかった。

　ただ、他のパートナーが反対し、最終的に数十億ドルの利益を上げた。

　彼は、R指定映画を製作するスタジオから利益を得たくなかったため、

　　　アーティザン・エンターテインメント

との取引から手を引いた。

　なお、ベイン・キャピタルは会社を売却する前に投資額を3倍に増やし、新しいオーナーによって詐欺が発覚した。

　しかし、ロムニー氏は関与を疑われなかった。

　ベイン・キャピタルが会社を買収した後、ロムニー氏はその会社にほとんど関与していなかったケースもあった。
　ベイン・キャピタルのレバレッジド・バイアウトは、買収直後、あるいは同社がその役割を終えた後に、レイオフにつながることもあった。

　 これらの投資やバイアウトによって失われた雇用数と比較してベイン・キャピタルが創出した雇用数の正確な数は、記録の不足と、ベインキャピタルが自社と投資家のプライバシーを重視する傾向にあるため不明である。

　買収企業の価値を最大化し、ベインの投資家への利益還元を最大化することが、同社の主な投資目標であった。

　ただ、雇用創出ではなかった。

　ベイン・キャピタルによるアンパッドの買収は、対象企業自体が後に倒産したにもかかわらず、ベイン・キャピタルが早期支払いと管理手数料で多大な利益を得た取引の例である。

　デイド・ベーリングも、ベイン・キャピタルが投資額の8倍の利益を得たもが、同社自身は負債を抱えた。

　ベイン・キャピタルが撤退する前に1000人以上の従業員を解雇した事例の一つである。

　その後、同社は倒産し、さらなる人員削減が行われた後、回復し繁栄した。

　時折発生した人員削減について、ロムニー氏は2007年に「時に薬は苦いものですが、患者の命を救うためには必要です。私の仕事は企業を成功させることでした。そして、家族にとって最高の安心感は、彼らが働く会社が健全であることです。」と述べている。
　1990年、財政破綻の危機に直面したベイン・アンド・カンパニーはロムニーに復帰を要請した。

　1991年1月に新CEOに就任が発表され、彼は象徴的な1ドルの報酬を受け取った。

　この間、ベイン・キャピタルのマネージング・ゼネラル・パートナーは継続した。

　彼はベイン・アンド・カンパニーの従業員持株制度と不動産取引の再編を監督し、1,000人の従業員を結集し、ベインと他の創業パートナーを経営から排除する新しい統治構造を導入し、財務の透明性を高めた。

　彼は、会社から多額の資金を引き揚げたベインと他の初期オーナーに多額の資金を返還させ、連邦預金保険公社を含む債権者を説得して全額より少ない金額の支払いを受け入れさせた。

　約1年で、彼はベイン・アンド・カンパニーを黒字転換に導いた。

　その後、彼は経営を新たな経営陣に引き継ぎ、1992年12月にベイン・キャピタルに復帰した。

　ロムニーは1993年11月から1994年11月まで、米国上院議員選挙に出馬するためベイン・キャピタルを休職した。

　その間、アンパド社の労働者はストライキを起こし、ロムニーに介入を求めた。

　ベイン・キャピタルの弁護士の助言に反して、ロムニーはストライキ参加者と面会した。

　ただ、この件に関して自身に権限はないと伝えた。
　1999年までに、ベイン・キャピタルは全米有数のプライベートエクイティファームの一つへと成長を遂げた。

　パートナー数は5人から18人に増加し、従業員数は115人、運用資産は40億ドルに達した。

　実現投資に対する同社の平均年間内部収益率は113%、投資家への平均年間収益率は約50〜80%である。

　1999年2月、ロムニーは2002年ソルトレークシティオリンピック組織委員会の会長兼CEOに就任するため、ベイン・キャピタルを有給休暇で休職した。

　一部の公式声明ではパートタイムの役職にとどまるとされていた。

　なお、ロムニー氏は引き続き同社の唯一の株主、マネージング・ディレクター、CEO、社長を務め、会社法務文書や法的文書に署名し、社内での自身の利益管理を行い、退任条件に関する長期にわたる交渉を行った。

　彼は同社の日常業務や新規プライベート・エクイティ・ファンドの投資決定には関与しなかった。

　この間、彼は複数の取締役会の役職を維持し、定期的にマサチューセッツ州に戻って会議に出席した。

　2001年8月、ロムニー氏はベイン・キャピタルに戻らないと発表した。

　同社からの離脱は2002年初頭に完了した。

　彼は所有権を他のパートナーに譲渡し、バイアウトファンドや投資ファンドを含むベイン・キャピタル傘下のいくつかの事業体において、退職パートナーとして利益の一部を受け取ることができる契約を交渉した。

　プライベートエクイティ事業は引き続き繁栄し、彼に数百万ドルの年間収入をもたらした。