SAP ヨーロッパの多国籍ソフトウェア会社

SAP SE

　ドイツのバーデン＝ヴュルテンベルク州ヴァルドルフに拠点を置くヨーロッパの多国籍ソフトウェア会社で、世界最大のエンタープライズリソースプランニング（ERP）ソフトウェアベンダーである。

　1972年に民間パートナーシップとして

　　　Systemanalyse und Programmentwicklung（システム分析プログラム開発）

が設立された。

　収益増加　341 億 8000 万ユーロ (2024 年)
　営業利益　46億6,500万ユーロの減少 (2024年)
　総資産　741億2,000万ユーロ増加（2024年）
　総資本　458億1,000万ユーロ増加（2024年）
　従業員数　109,973人（2024年）

　SAP GbR は、1976 年から 5 年間の移行期間を経て、1981 年に

　　　Systeme, Anwendungen und Produkte in der Datenverarbeitung

　　　　　　　　　　　　(データ処理におけるシステム、アプリケーション、製品)

の略称で

　　　SAP GmbH

に完全移行した。

　2005 年にはさらに組織再編が行われ、SAP AG となった。

　2014 年 7 月 7 日以降、同社の企業構造は汎ヨーロッパの

　　　societas Europaea (SE)

の構造となっているため、以前のドイツの企業アイデンティティは、現在子会社の

　　　SAP Deutschland SE & Co. KG

となっている。

　同社は 180 か国に地域オフィスを構え、従業員数は 111,961 人以上である。

　SAP は、DAX および Euro Stoxx 50 株価指数の構成要素である。

　同社は収益で米国以外では最大のソフトウェア企業であり、収益では世界第3位の公開ソフトウェア企業である。

　2023年12月現在、SAPは時価総額でドイツ最大の企業である。
　1971年にゼロックス社がコンピュータ ハードウェア製造業界から撤退したとき、同社は IBM に

　　　ビジネス システム

を IBM のテクノロジーに移行するよう依頼した。

　移行に対する IBM の補償の一部として、IBM に

　　　Scientific Data Systems (SDS)/SAPE ソフトウェア リポジトリの権利

が与えられたため、AI 部門の 5 人の IBM エンジニア

　　　ディートマー・ホップ（Dietmar Hopp）
　　　ハンス・ヴェルナー・ヘクター（Hans-Werner Hector）
　　　ハッソ・プラトナー（Hasso Plattner）
　　　クラウス・ツィラ（Klaus Tschira）
　　　クラウス・ヴェレンロイター（Claus Wellenreuther）　　　

は、このソフトウェアに基づく企業全体のシステムに取り組んでいたが「もはや必要ない」と会社から言われた。

　彼らはこのプロジェクトを放棄するのではなく、IBM Tech を離れて、別の会社を設立することにした。

　1972年6月、彼らはドイツ民法に基づく民間パートナーシップとして

　　　SAP Systemanalyse und Programmentwicklung (「システム分析およびプログラム開発」/「SAPD」) 社

を設立した。

　最初の顧客は、オーストリアのオストリンゲンにある

　　　Imperial Chemical Industries（ICI）

のドイツ支社であった。

　そこで彼らは給与計算と会計用のメインフレーム プログラムを開発した。

　IBM のようにデータをパンチ カードに機械的に保存するのではなく、組織のすべての活動に

　　　共通の論理データベース

を使用しながら、電子システムにローカル保存した。

　そのため、パンチ カードを夜間に処理する必要がなかったため、彼らはソフトウェアをリアルタイム システムと呼んだ。

　このため、彼らの主力製品の名前には 1990 年代後半まで R が付いていた。

　この最初のバージョンは、他の関心のある関係者に提供できるスタンドアロン ソフトウェアでもあった。

　1973年、SAP は最初の商用製品である

　　　RF 財務会計システム

を発売した。

　このシステムは、最終的にSAP R/1という名前が付けられたシステムの他のソフトウェアモジュールの継続的な開発の礎となった。

　これは、複数のタスクに共通のシステムを提供した。

　これにより、集中型データストレージの使用が可能になり、データのメンテナンスが改善された。

　したがって、技術的な観点からは、データベースが必要であった。
　1976年、SAP GmbH Systeme, Anwendungen und Produkte in der Datenverarbeitung (データ処理におけるシステム、アプリケーション、製品) が販売およびサポート子会社として設立された。

　この5 年後、この民間パートナーシップは解消され、その権利は

　　　SAP GmbH

に引き継がれた。

　本社は翌年、ドイツのヴァルドルフに移転した。

　1979年、SAP は SAP R/2 をリリースし、システムの機能を資材管理や生産計画などの他の分野に拡張した。

　1981年、SAP は再設計された製品を市場に投入した。

　ただ、SAP R/2 は 1985 年から 1990 年まで改善されなかった。

　1992年、SAP は SAP R/3 をリリースした。

　SAP は1995年まで R/3 のいくつかのバージョンを開発し、リリースした。

　1988年8月、SAP GmbH は SAP AG となり、1988年11月4日に株式公開が開始された。

　株式はフランクフルト証券取引所とシュトゥットガルト証券取引所に上場された。

　1990年代半ば、SAP はメインフレーム コンピューティングからクライアント サーバー アーキテクチャに移行した。

　1995年、SAP はドイツの株価指数 DAX に含まれ、2003年9月22日には STOXX Europe 50 に含まれた。

　1996年には、スペインの技術コンサルティング会社 Seidor との提携を開始し、ラテン アメリカ全土に SAP ソリューションの拡大を開始した。

　2004年、R/3 は SAP ERP Central Component (ECC) 5.0 に置き換えた。

　顧客をサービス指向アーキテクチャに移行するために、アーキテクチャの変更も行った。

　同社の正式名称は、2005年の年次総会後にSAP AG（公開有限会社）となった。

　2006年、SAP ERP 6.0がリリースされた。SAP ERP 6.0は最新バージョンであり、それ以来SAP拡張パックを通じて更新されており、最新のものは2016年のSAP ERP 6.0拡張パッケージ8である。

　2012年以降、SAPはクラウドベースの製品を販売する複数の企業を買収した。

　アナリストは数十億ドル規模の買収のいくつかを、競合他社の

　　　Oracle

に対抗する試みと見なしている。

　2016年、SAPはクラウドベースの出張および経費管理ソフトウェアのプロバイダーである

　　　Concur Technologies

を83億ドルで買収した。　

　これは、SAPのこれまでの最高額の買収であった。

　この買収に対するアナリストの反応はまちまちで、コメルツ銀行の

　　　トーマス・ベッカー

は、SAPにとってConcurが正しい選択であったかどうかを疑問視した。

　ただ、クレディ・スイスはこの買収を「積極的な」動きと呼んだ。

　2014年5月21日、SAP AG は年次株主総会で、株主の投票の 99% が

　　　欧州株式会社 (Societas Europaea, SE)

への法的形態の変更を承認し、同時に SAP SE の最初の監査役会を選出したことを発表した。

　会社の法的形態の変更は、商業登記簿への登録時に行われ、2014年7月になる予定であった。

　　2014年7月7日、SAP は法的形態を欧州会社 (Societas Europaea, SE) に変更したことを発表した。

　その結果、ドイツの子会社は

　　　SAP Deutschland SE & Co. KG

に改名した。

　この変更に同社は約 400 万ユーロを費やした。

　2014年、IBM と SAP はクラウドベースのサービスを販売するための提携を開始した。

　同様に、SAP は 2015 年に HPE と提携し、SAP プラットフォームを実行する安全なハイブリッド クラウド ベースのサービスを提供した。ま　

　HPE と IBM はどちらも SAP にインフラストラクチャ サービスを提供しており、SAP は SAP HANA クラウド ソリューションをその上で実行している。

　SAP は、顧客にデータ視覚化ツールと改善されたモバイル アプリケーションを提供するために、Microsoft との追加提携を発表した。

　2015 年 5 月以降、同社は一連の注目を集めた贈収賄調査に対処してきた。

　その中には、パナマ政府関係者に賄賂を贈って有利な技術契約を獲得しようとした元幹部の計画に対する

　　　米国証券取引委員会

の民事訴訟を和解させるために 390 万ドルを支払うことになった調査も含まれている。

　SAP は、クラウド ビジネスの拡大と

　　　SAP HANA

の成功により、収益予測を上回った。

　この成長は、

　　　Concur 

　　　Fieldglass

の買収にも一部起因しています。

　SAPは2017年以来、EUクラウド行動規範の創設メンバーである。

　2021年5月以来、SAPはEUクラウド行動規範に準拠する選ばれたクラウドサービスを最初のクラウドサービスプロバイダーの1つとしてリストしている。
　2017年7月、SAPが南アフリカで物議を醸し、政治的影響力を持つ

　　　グプタ家

とのビジネス取引に関与していたとの疑惑が浮上した。

　SAPは、トランスネットとの取引を確保するために、グプタ家が支配する

　　　CADハウス

に1億ランドを支払ったと非難された。

　SAPは、CADハウスがSAPと取引した経験がなかったにもかかわらず、その金は「営業部隊の延長」として支払われたと主張し、疑惑を否定した。

　グプタ家とSAPの取引は、広く報道された

　　　電子メールの漏洩

で明らかになった。

　疑惑を受けてSAPは調査を開始した。

　その結果、南アフリカのマネージャー4人が休職となり、携帯電話とコンピューターが押収された。

　調査が続く間、

　　　クラース・クーネマ

がアフリカ担当のマネージングディレクター代理に任命された。

　2017年10月26日、SAPは南アフリカの贈賄疑惑に関連して、米国証券取引委員会（SEC）に

　　　海外腐敗行為防止法（FCPA）

を含む米国法違反の疑いで自主的に報告したと発表した。

　法律事務所ベーカー・マッケンジーが実施したSAP独自の調査では、SAPが

　　　トランスネット

　　　エスコム

と4,800万ドル相当の契約を獲得する一方で、グプタ家と関係のある第三者に770万ドルの手数料を支払っていたことが明らかになった。

　同社は2016年、モノのインターネット（IoT）市場の成長を活用する戦略の一環として、IoT関連の技術に多額の投資を行う計画を発表した。

　この目的のため、2020年末までに関連分野に20億ユーロを投資する予定である。

　SAPはまた、SAP IoTと呼ばれる新しい製品ラインも立ち上げる予定で、これは「インターネットに接続されたモノからの大量のデータを機械学習とSAPのリアルタイムデータベースS/4 HANAと組み合わせる」ものとなる。

　2018年、そして現在進行中の法廷闘争において

　　　テラデータ

はSAPを知的財産の盗難と不正行為で告発した。

　2021年、ドイツの週刊ニュース雑誌

　　　デア・シュピーゲル

は、SAPがマンハイム大学の研究者に資金提供したことに関して、疑わしい行為についてさらに主張した。

　彼らは事実上、競合他社の技術を調査するためにSAPから報酬を受け取っていた。

　その後の記事で、デア・シュピーゲル誌は、SAPが長年にわたって厳格なガバナンスを維持することを怠ってきたと主張した。

　2022年6月、ドイツのビジネス雑誌マネージャー・マガジンは、リーダーシップの管理スタイルがコンプライアンスリスクの増大の原因である可能性があるとする記事を掲載した。
　2019年1月29日、SAPは、ブロックチェーン、量子コンピューティング、機械学習、モノのインターネット、人工知能など、より現代的なクラウドベースのテクノロジーに移行する戦略計画の一環として、同社で約4,000人の人員削減を行う計画を発表した。

　2019年2月、SAPはケニアとタンザニアの政府契約に関連する「不適切な行為」で告発されました。

　匿名の内部告発者は、弁護士事務所を通じて、SAPがTwenty Third Century Systems（TTCS）を利用してタンザニア港湾局（TPA）の職員に賄賂を贈り、ソフトウェアライセンスとサービスの提供を含む660万ドルのエンタープライズリソースプランニングソフトウェア入札を獲得したと主張した。

　2021年、SAPは米国の裁判所で、米国のイランに対する制裁に反してイランの企業にソフトウェアを輸出したことを認め、800万ドルの罰金を科された。

　2021年4月13日、SAPは、SAPと投資会社

　　　Dediq GmbH

による金融サービス業界（FSI）専用ユニットである合弁会社

　　　SAP Fioneer

の設立を発表しました。

　Dediq GmbHは、新たに設立されたユニットに5億ユーロ以上を投資し、見返りに80％の株式を受け取った。

　SAPは、自社の製品、組織単位、販売ネットワークを事業に持ち込み、株式の20％を保有している。

　2022年5月、社内でのいじめやセクハラの申し立てが複数あり、上級男性管理職による女性同僚への望まないアプローチのケースが多数あった。

　苦情が申し立てられたり、情報が公開されたりすると、人事部は役に立たなかったり敵対的だったりすることが判明した。

　たとえば、あるケースでは、シドニーで女性従業員が会社のイベント中に男性管理職に体を触られましたが、彼は責任を問われることはありませんでした。

　別のケースでは、女性従業員が管理職から性的に狙われ、日中はウェブカメラをオンにしておくように求められた。

　その後、彼女は苦情を申し立て、「パフォーマンス管理」の対象となった。これは、会社を去るよう求められる前兆であった。

　共同CEOを含む数名の女性幹部が会社を去り、SAPがその後マイクロソフトから他の数名の女性上級管理職を採用したにもかかわらず、女性が不当に扱われているという懸念が高まった。

　2024年、米国司法省と証券取引委員会による調査の後、SAPは南アフリカ、インドネシア、タンザニア、マラウイ、ガーナ、ケニア、ジンバブエ、アゼルバイジャンでの海外腐敗行為防止法違反を解決するために2億2000万ドルの支払いを命じられた。

　SAPは政府契約を獲得するために国営企業の役人に賄賂を支払った。

　SAPは3年間の起訴猶予協定を締結し、刑事罰1億1880万ドルと行政没収金1億339万6765ドルを支払った。

　南アフリカでは、SAPは第三者の仲介業者を利用して、トランスネット、南アフリカ歳入庁、ヨハネスブルグ市、エスコム、水道衛生局など、さまざまな国営企業から入札を獲得した。

　2024年3月、SAPは南アフリカの特別捜査ユニットとの合意の一環として5億ランドを支払うことに同意した。

　この合意は、贈収賄に関連するさらなる金銭的請求に対してSAPを補償するものであったが、刑事訴追からいずれかの当事者を免除するものではない。
　2024年9月3日、CTO兼取締役の

　　　ユルゲン・ミューラー氏

が、社内イベントでの不適切な行為があったため、今月末までに退社することで合意したことが発表された。

　この事件の報道を受けて、2024年9月13日、ドイツの検察当局が同氏と女性従業員の間の性的嫌がらせについて正式な捜査を開始したと報じられた。
　1991年以来、SAPは70社を超える企業を買収している。

　同社は、主要なERP製品に加えて、データベースソフトウェアとテクノロジー（特に自社ブランドのSAP HANA）およびクラウドエンジニアリングシステムも販売している。　

　2017年度、SAPは40億ユーロの利益を報告し、年間売上高は235億ユーロで、前会計年度比6.3%の増加となった。

 SAPの株式は1株当たり154ドル以上で取引され、2023年12月には時価総額が1,800億ドルに達し、時価総額でドイツ最大の企業となった。

　SAPは、執行委員会と監査委員会の2層構造の取締役会を採用している。

　2019年10月、ジェニファー・モーガンとクリスチャン・クラインがSAPの共同CEOに任命された。

　2020年4月、ジェニファー・モーガンがSAPを去り、

　　　クリスチャン・クライン

が引き続き単独CEOとして業務を行うことが発表された。

　その理由は、COVID-19による不況の現在の環境では、「企業は迅速かつ断固とした行動を取る必要があり、非常に明確なリーダーシップ構造によって最もよくサポートされる」ためである。

　同社の従業員の大半はドイツと米国にいる。約2万人の従業員がドイツに拠点を置いており、約19,311人の従業員が米国に拠点を置いている。

　2022年には、Ver.diとIG Metallの労働組合名簿からの15人の候補者を含む45人の従業員代表がSAP SE労働協議会に選出された。

　これらはドイツの 17,000 人の従業員を代表している。

　本社は、製品開発に関連するコアエンジニアリング活動だけでなく、全体的な管理も担当している。

　世界中の顧客サポートは、現場組織ではなく、Active Global Support (AGS) と呼ばれる統合組織によって提供されている。

　同社はまた、従業員に社会休暇を通じてボランティアを奨励し、さまざまな国にチームを派遣して非営利団体を支援している。

　SAP の従業員は、中国、インド、ブラジル、南アフリカでボランティア活動を行っている。

　SAP Labs は、SAP コア製品の開発と改善を行う研究開発拠点です。

　SA​​P Labs は、世界中のハイテククラスターに戦略的に配置されている。

　SAP SE の最も著名な 4 つのラボは、ドイツ、日本、イスラエル、米国にある。

　Labs Walldorf は 1972 年に設立され、SAP の主要拠点となった。

　当初、SAP の拡大の焦点は、高度に発達した IT 市場への参入でした。

　1993 年、パロアルトは SAP ラボの一部となった。

　SAP は優秀な従業員を獲得するため、2003 年にバンガロールに別のラボを開設した。

　SAP リサーチは、世界中に 21 の研究拠点を持つ SAP SE のグローバル技術研究部門である。

　各センターは、SAP 開発センターの近く、または大学のキャンパス内にある。

　このグループは、応用研究を通じて新たな IT トレンドを特定して形成し、画期的な技術を生み出すことで、SAP の製品ポートフォリオに大きく貢献し、市場での主導的地位を拡大している。

　新機能やリリースに取り組む SAP の製品グループや開発ラボとは対照的に、SAP の研究者は、まだ製品化されていない機会を模索している。

◯地域シェア
　米国 32.7%
　EMEA（ドイツを除く）29.1%
　ドイツ 15.8%
　アジア太平洋（日本を除く）10.8%
　アメリカ（米国を除く）8.2%
　日本 4.0%