マデリン・ダンカン・ブラウン（Madeleine Duncan Brown）リンドン・B・ジョンソンの長年の愛人であると主張したアメリカ人女性

マデリン・ダンカン・ブラウン

　　　　　（Madeleine Duncan Brown）

　　　1925年7月5日 - 2002年6月22日

　アメリカ合衆国大統領

　　　リンドン・B・ジョンソン

の長年の愛人であると主張したアメリカ人女性である。

　その関係から息子が生まれたと主張することに加えて、ブラウンはジョンソンが

　　　ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の陰謀

に関与したとも主張した。　

　ブラウンは1997年の自伝『テキサスの朝：マデレーン・ブラウンとリンドン・ベインズ・ジョンソン大統領のラブストーリー』で自身の経歴について述べている。

　ブラウンによると、彼女はテキサス州ダラスの中流階級のカトリック教徒の家庭で育ち、父親は公益事業会社の監督者、母親は主婦だった。

　彼女はWHアダムソン高校に通っていたと述べている。

　ブラウンによると、彼女は19歳の時に、幼なじみで近所のソーダ売りのジェームズ・グリン・ブラウンと結婚したが、1955年に離婚した。

　彼女は夫について、アメリカ海兵隊の退役軍人で「戦争体験で神経がすり減って、どうしようもない、暴力をふるう酒飲みになっていた」と述べている。

　ブラウンによると、夫は「最終的には『慢性妄想性統合失調症』で退役軍人病院に入院した」という。

　ブラウンによると、彼女は1948年に夫が入院中に彼のもとを去り、生後2か月の息子ジミー・グリン・ブラウンを連れてダラスに戻ったという。　その後、同年グレン・アドバタイジングに採用され、ラジオ広告時間の購入も担当するメディアバイヤーに昇進したと彼女は述べている。

　1982年11月5日、ブラウンはダラス記者クラブで開かれた記者会見で、ジョンソンとほぼ20年間不倫関係にあったと主張した。

　ブラウンによると、不倫は1948年にダラスのアドルファスホテルで開かれたパーティーの後に始まり、1967年まで続いたという。

　ダラス・モーニング・ニュースも「ダラスの女性、自分はジョンソンの愛人だったと主張」という見出しでこの主張を掲載した。

　レディ・バード・ジョンソンとジョンソン家のスポークスマンが彼女の主張を否定したと報じた。

　ブラウンの声明は、ジョンソンとアリス・グラスの不倫報道が出てから3週間後に出されたもので、その中で彼女は「記録を消したい」と述べた。1987年6月18日、ブラウンの次男

　　　スティーブン・マーク・ブラウン（1950年12月27日 - 1990年9月28日）

は、テキサス州の地方裁判所にレディ・バード・ジョンソンに対して1050万ドルの訴訟を起こした。

　元ファーストレディとジョンソン大統領の友人2人、オースティンの

　　　ジェシー・ケラム

とダラスの

　　　ジェローム・T・ラグズデール

が、ジョンソン大統領からジョンソンの遺産の一部を奪おうと共謀したと主張した。

　彼の訴訟は、「私の法的な出生権が侵害され、私の法的な相続権を奪うための陰謀が企てられた」と主張した。

　この訴訟にはマデリン・ブラウンの宣誓供述書が含まれており、彼女は1948年にダラスのホテルの社交行事でジョンソン大統領と出会い、その後1948年から1969年まで不倫関係にあったと主張している。

　宣誓供述書によると、故ダラスの弁護士である

　　　ラグズデール

は、彼女の妊娠に関する法的問題の支援を任され、後にジョンソンを悪評から守るために自分が子供の父親だと主張した。

　レディ・バード・ジョンソンの報道官

　　　ベティ・ティルソン

は、「率直に言って、私たちはすべてが作り話だと確信しています」と述べたと伝えられている。

　ティルソンは、ジョンソン家の親しい関係者は「スティーブン・マーク・ブラウン」という名前を知らず、リンドン・ベインズ・ジョンソン図書館・博物館内に彼からの通信や訪問の記録もないと述べた。

　彼女はまた、話した誰もラグズデールを知らなかったと述べた。

　1987年8月5日号のピープル誌には、マデリンとスティーブン・ブラウンによるさらなる主張が詳しく掲載された。

　1940年代、ジョンソン夫妻はオースティンでラジオ局

　　　KTBC

を所有しており、ジェシー・ケラムが運営していた。

　マデリン・ブラウンは、ダラスの広告代理店で働いていた1948年にKTBCのレセプションに出席した。

　ケラムを通じてジョンソンを紹介されたと主張している。

　彼女は、この最初の出会いでジョンソンが彼女に言い寄ってきて、彼女は彼に「魅了された」と報告した。

　ブラウンによると、ケラムはすぐに3週間後にアドルファス・ホテルで別のレセプションに彼女を誘った。

　その会合で、ジョンソンが彼女をホテルの彼のアパートに招待したことから、彼女とジョンソンの長い情事が始まったとブラウンは語った。

　ジョンソンは情事を秘密にするよう強く主張し、ケラムはジョンソンと彼女の出会いを手配する仲介人として機能したとブラウンは主張した。 　ピープル誌は、彼女がジョンソンとの関係は「純粋に肉体的な」ものであり、彼には他にも愛人がいることを知ったと主張したと報じた。

　ブラウンによると、彼女は1950年4月にジョンソンに自分が妊娠していることを伝え、彼は彼女の必要を満たすと約束した。

　彼女は、ケラムが数日後に弁護士

　　　ジェローム・ラグズデール

から連絡があると言ったと主張した。

　ブラウンは、1950年にスティーブンが生まれた後、ラグズデールが「住み込みメイド付きの6部屋の家を1万5000ドルで」提供し、彼女に渡した様々なクレジットカードの支払いをしたと主張した。

　彼女は、担当医が彼女の夫

　　　ジェームズ・グリン・ブラウン

を父親として記録すると言ったと述べた。

　ブラウンによると、彼女は1950年代から1960年代にかけてジョンソンと会い続けた。

　彼女はピープル誌に、ケラムの勧めで5年間、ダラスのビジネスマンと「書類上の結婚」をしていた。

　しかし、、一緒に住んだことはなかったと語った。 

　離婚から数年後、友人からその男性が自殺したと聞いたという。

　ブラウンによると、彼女はオースティンのジョンソンに会いに行く途中で、ラジオで

　　　ケネディ暗殺

の知らせを聞き、引き返したという。

　数週間後、ケラムはいつもの場所で新アメリカ合衆国大統領と会うように指示したとブラウンは語った。

　ブラウンはピープル誌に対し、息子のスティーブンが運転していた自動車事故で彼女が重傷を負った。

　その後、ジョンソンとの性的関係は1967年に突然終わったと語った。

　彼女によると、1969年にテキサス州ヒューストンのシャムロックホテルでジョンソンと最後に会ったと言い、2時間話し合い、それが彼女にとって初めての「本当の会話」だったという。

　ブラウンによると、1973年にケラムが電話をかけてきてジョンソンが亡くなったと伝えたという。

　ブラウンは、1987年2月に心臓発作を起こして入院した。

　死を覚悟してスティーブンをベッドサイドに呼び、父親の正体を隠していたことを告白したと述べた。

　ピープル誌によると、スティーブンは出生証明書に母親の最初の夫の名前が記載されていたにもかかわらず、本当の父親が誰なのか「不安に悩まされ」ており、「家族の弁護士の友人が実は父親ではないかと疑うようになった」という。

　スティーブンの母親は、ジョンソンからのラブレターは受け取っておらず、彼女の話を裏付けることができる数少ない人物は亡くなっていると述べた。

　ブラウンによると、彼女はスティーブンが遺産相続権を主張するのを助けるために父子関係を主張したという。

　この訴訟の目的について、スティーブンは「公の場では遅かれ早かれ真実が明らかになる。それが私にとって重要なことだ。私は姓をジョンソンに変えたい。そうあるべきだ」と述べた。

　彼は2人の甥を養うために元ファーストレディからお金が欲しいと主張した。

　インタビューの直後、エンターテインメントライターの

　　　ハリー・ホーン

は、ピープル誌でのブラウンの主張は「出版社や映画プロデューサーを大騒ぎにし、この女性は実際に本を書くだろう」と述べた。

　ハウンは、文学エージェントのスコット・メレディスが本と映画の権利を扱うために雇われたと書いている。

　1989年、スティーブン・ブラウンがレディ・バード・ジョンソンに対して起こした訴訟は、彼が出廷しなかったため却下された。

　彼は1990年に39歳でリンパ癌で亡くなった。
　父親であると主張した後、ブラウンはケネディ暗殺の陰謀があったことを示唆する他の主張を行った。

　その中にはジョンソンが陰謀を事前に知っていたという告発も含まれていた。

　1988年、彼女は調査コラムニストの

　　　ジャック・アンダーソン

の全国ネット番組「American Expose: Who Murdered JFK」に短時間出演し、「1963年の秋、私は他の広告関係者と一緒にカルーセル・クラブにいたのですが、

　　　ジャック・ルビー

が、リー・ハーヴェイ・オズワルドがクラブにいて、

　　　エドウィン・ウォーカー少将

を撃ったと自慢していたと言っていました」と述べた。

　ブラウンがジョンソンを関与させたとするインタビューは、1992年2月の「A Current Affair」のエピソードや、2003年のナイジェル・ターナーのドキュメンタリー「ケネディを殺した男たち」の「The Guilty Men」というエピソードにも登場した。

　ブラウンは、ジョン・F・ケネディ暗殺の前夜、ダラスのクリント・マーチソン・シニアの自宅で開かれたパーティーに出席していたと主張した。そのパーティーにはジョンソンの他、

　　　J・エドガー・フーバー

　　　リチャード・ニクソン

　　　HL・ハント

　　　ジョージ・ブラウン

　　　ジョン・マクロイ

など、著名人、富豪、権力者らが出席していた。

　ブラウンによると、ジョンソンは数人の男性と会談した後、彼女に「明日以降、あのクソったれのケネディどもは二度と私を困らせない。脅しじゃない。約束だ」と言ったという。

　ブラウンは、1963年大晦日にテキサス州オースティンのドリスキルホテルでリンドン・ジョンソンと会い、ジョンソンがケネディ暗殺の陰謀を認め、「テキサスの石油会社とワシントンの反逆的な諜報員ども」が犯人だと主張したと述べた。

　ブラウンは、ジョンソンが暗殺を止めようとしなかったのはケネディを憎み、大統領になりたいという強い願望があったからだと主張した。

　ブラウンはまた、暗殺前にカルーセルクラブでオズワルドがルビーと会っているのを目撃したと述べた。

　ただ、この会談が暗殺のどれくらい前に行われたかについては明らかにしなかった。

　ブラウンの告発から数年経ち、彼女の話は全国的な注目を集め、陰謀論者数名が彼女の主張をケネディ大統領暗殺事件の陰謀の証拠として引用した。

　2012年11月、ダラス・モーニング・ニュースは

　　　ヒュー・エインズワース

による記事を掲載し、デイビッド・ペリーがブラウンの主張を反証しようとした努力について報じた。

　元保険調査員で陰謀論の暴露者でもあるペリーは、前月、ブラウンの主張に関する調査結果を自身のウェブサイトに「想像の中のテキサス」と題する記事として掲載していた。

　ペリーによると、彼と妻はブラウンがケネディ暗殺について当初の告発をした数年後にある社交行事で彼女に会ったが、彼女の話は信じがたいものだったという。

　彼は当初、ブラウンがジョンソンと他の著名人がマーチソンの家で開かれたパーティーに出席していたという陰謀説を調査しようと決めたと述べた。

　ペリーは、1963年11月21日の夕方にダラス郊外にいた重要人物にはジョンソン（ケネディと共にヒューストンとフォートワースにいた）、マーチソン（東テキサスにいた）、フーバー（ワシントンDCにいた）などがいることを示す証拠を指摘した。

　彼は、ニクソンが当時ダラスに滞在していたとき、ダラス・モーニング・ニュースの記者がニクソンがダウンタウンのボトラー会議にいたと伝えたと述べた。

　ブラウンと息子の父子関係の主張を調査していたペリーは、ダラス・モーニング・ニュース紙で息子がレディ・バード・ジョンソンに対して起こした訴訟が却下されたという記事と、ブラウンが過去に遺言書偽造の罪で有罪判決を受けていたことを示す情報を発見した。

　1989年、ブラウンは前年に亡くなった高齢の親戚の遺言書を偽造した罪で有罪判決を受け、懲役10年の刑を宣告された。

　1994年、控訴裁判所が彼女が遺言書の原本に署名していなかったと判断し、有罪判決は覆された。

　2012年、ペリーは、スティーブン・マーク・ブラウンが1979年にダラスの弁護士

　　　ジェローム・ラグズデール

の遺産相続人であると主張して別の父子関係訴訟を起こしていたことを示す文書を発見した。

　ブラウンによると、ラグズデールはジョンソンを悪評から守るために息子の父親だと主張していたという。

　その訴訟は証拠不十分で却下された。