米製薬大手イーライリリーが開発したアルツハイマー病治療薬が米国で認可された。米国で600万人にのぼる患者の症状進行を遅らせる薬としては、2番目に米食品医薬品局(FDA)の承認を獲得した。
「ドナネマブAZBT(キスンラ)」が臨床試験で効果を示したのは3年余り前。規制手続きで数々の遅延を経て獲得した認可は、リリーと投資家には大きな勝利となった。2023年初めに米国で販売が認可されたエーザイの「レケンビ」と競合する。
2日の発表を受け、リリーの株価終値は0.8%安。肥満症と糖尿病の事業が急成長する中、株価は年初から前日までに50%余り上昇していた。一方、エーザイの提携先であるバイオジェンは1.3%安。
リリーによれば、ドナネマブの治療開始から1年間のコストは3万2000ドル(約520万円)。これは平均的な体格の人がレケンビの治療を1年間受けるコスト(2万6500ドル)をやや上回る。だが、ドナネマブによって除去される脳の有害物質アミロイドが最小レベルに縮小すれば、医師は治療を中止できる。これは臨床試験で多くの人が約1年経過後だった。
このためドナネマブの治療費総額はアミロイドを除去する他の主要治療薬と比べて少ないケースもあり得るとリリーは説明している。レケンビの承認につながった主要臨床試験では、患者が1年半続けて治療を受けた。
エーザイとリリーの医薬品はともに、アルツハイマー病患者の脳からアミロイドを除去することを目指す点滴製剤だが、症状の進行を若干遅らせるだけで、対象もアルツハイマー病患者全体の中で少数派の早期の患者だけに認められている。副作用には脳の腫れと出血がある。
添付文書によると、リリーの主要治験では、脳の腫れや出血は投与された患者の36%に見られ、症状が出たのは6%だった。こうした副作用を監視するために定期的な検査が求められる。
投与の頻度はレケンビが2週間に1回に対しドナネマブは4週間に1回のため、利便性で優位な可能性がある。
アルツハイマー病創薬基金(ADDF)の共同設立者ハワード・フィリット氏は承認前のインタビューで、投与の頻度が少ないことと、治療を中止できる可能性は「かなり重要」だと語っている。