ボウマン米連邦準備制度理事会(FRB)理事は25日、ロンドンでの講演で、「まだ政策金利引き下げに適切な地点にはない」と指摘し、「経済見通しを巡るリスクと不確実性を踏まえ、政策スタンスの将来的な変更を検討するアプローチにおいて、私は慎重姿勢を保つつもりだ」と語った。
インフレ見通しに対する幾つかの上振れリスクが見られると述べ、政策金利をしばらくの間、高水準に維持する必要があるとの考えをあらためて表明した。
まず、新型コロナウイルスのパンデミック期に経験したサプライチェーンの混乱はおおむね解消した点や、最近数カ月の労働参加率の伸び悩みに言及し、供給面の一層の改善から経済が恩恵を受ける公算は小さいと話した。
このほか、労働供給を押し上げて、労働市場の需給改善に寄与してきた移民流入に対し、従来よりも制限的なアプローチが講じられる可能性を指摘した一方で、手頃な住宅在庫が低水準にあることから、一部の地理的地域への移民流入は賃貸料の上昇圧力をもたらす可能性があるとの認識も示唆した。
なお、米経済と他の主要国・地域の経済との間で最近数カ月に見られる相違について考えられる理由としては、一段とオープンな米国の移民政策やパンデミック以降の財政支援の規模を挙げた。
ボウマン理事は労働市場の逼迫が大幅な賃上げにつながっている点や、地政学的情勢、財政刺激策、金融情勢の緩和もインフレ見通しに対する追加の潜在的リスクだとも述べた。
米金融当局は11、12両日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、主要政策金利を二十数年ぶりの高水準に据え置くとともに、当局者は最新の
金利予測分布図(ドット・プロット)
で年内の利下げ回数予想を中央値で1回と、3月時点の3回から減らした。
金利予測分布図(ドット・プロット)
で年内の利下げ回数予想を中央値で1回と、3月時点の3回から減らした。
理事は「政策金利をあまりにも早期に、あるいは急ペースで引き下げれば、インフレ再燃につながり、インフレ率を長期的に2%に戻すのに、将来的にさらなる利上げが必要となる恐れがある」と語った。
ボウマン理事はまた、2021年当時のインフレ高進に金融当局の対応が遅れた点も振り返った。
パンデミック以前に何年も低インフレが続いたことや、その後のデータ改定を指摘するとともに、FOMCによる20年の金融政策戦略の変更が果たした役割にも言及した。
パンデミック以前に何年も低インフレが続いたことや、その後のデータ改定を指摘するとともに、FOMCによる20年の金融政策戦略の変更が果たした役割にも言及した。
「20年8月の金融政策戦略に関するコンセンサス声明見直しを受け、同年9月と12月のFOMC声明に導入した新たなフォワードガイダンスと相まって、21年の当時に金融緩和策解除の遅れにつながったというのが私の見解だ」と説明した。
なお、米金融当局は年内に政策枠組みの新たな見直しに着手する予定。