ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領が最近、ウクライナに
事実上の降伏
を促すなど「強気の発言」を繰り返している。こうした背景には、独裁者に取り入る媚びた輩が、不快感を示す情報を取り除いた偏向的な情報しか集まらず、限定的な情報に基づき「前線で露軍が優位に立った」との認識やウクライナ支援を巡る
欧米諸国の足並みの乱れ
から、ロシアの「戦勝」が近づいているとの自信を深めているとみられる。
プーチン氏は昨年12月、侵攻当初から
ロシアの目標
は「変わっていない」と述し、具体的には
ウクライナの親欧米派勢力の排除
を意味する「非ナチス化」や、
北大西洋条約機構(NATO)加盟断念
を指す「非軍事化」「中立化」だと説明した。
また、停戦にはウクライナがこれらの要求に応じることが必要だとプーチン氏が考えていることは明白だが、視点を変えれば、大統領選挙における再選を狙った「強いロシア」を描いたものに近づこうとしているだけの話で、実際の状況とは大きく異なる。
そのためだろう、大統領選挙への出馬のおそれがあり、軍事力も与えてしまったプーチン子飼いのサルゴジンが反乱を起こした後の対応でも、「罪を問わない」といった和解で油断させたうえ搭乗した航空機をミサイルで撃ち落とすような敵対するものに対する見せしめで派手な暗殺を実行した。
プーチン氏は先月1日にも「紛争をできるだけ早く終わらせること」を望んでいるが、それは「ロシアの条件に従う限りでだ」と譲歩に応じない考えを強調した。
ただ、プーチン氏はこの日、ロシアの考える停戦条件には言及しなかった。
プーチン氏は同月16日、ウクライナのゼレンスキー政権が
対露交渉を否定
していることについて「彼らが交渉したくないならそれでいい。だが、ウクライナ軍の反攻は失敗し、主導権は完全に露軍に移った」と主張した。
また、「このままではウクライナは取り返しのつかない深刻な打撃を受けるだろうが、それは彼らの責任だ」と続け、ウクライナは早期に降伏すべきだとの考えを示した。
さらに、ウクライナ全土からの露軍の撤退を前提とするウクライナの停戦条件を「法外な要求だ」と批判した。
また、「戦利品をロシアに放棄させようとする試みは不可能だ」と主張し、占領地域を返還しない意思を明確にした。
なお、言行不一致となって冷静さが欠落してきているプーチンが大統領への再選に自信がないのだろう、ロシア反体制派指導者
ナワリヌイ氏
を事前にシベリアまで監獄を移送させたのち、暗殺したと見方が強く出ている。
死亡原因の捜査で遺体引き渡しを先延ばししていることからVXガスなどを使用しての暗殺で、その痕跡が無くなるまで引き渡さにということのようだ。
つまり、大統領選挙が終わるまでは渡さないことで選挙での逆風となる事実をもみ消そうとしている行為でしかない。
シンクタンク「戦争研究所」では、プーチン氏の最終目標はウクライナを欧米から引き離し、ロシアの勢力圏下に置くことだと一貫して分析している。
プーチン氏の強気姿勢の背後には、ワグネルの兵士の消耗を高めるため、戦場に投入したことで露軍の前進が一時的に強まっているもようだ。露軍はウクライナ軍が昨年6月に着手した反攻で疲弊したとみて、昨年秋ごろから東部で攻勢を強化している。
12月にはドネツク州の激戦地マリインカを制圧し、今年1月にも同州や東部ハリコフ州で集落を制圧したと主張した。
一方、ウクライナ軍は人員や砲弾の不足が深刻化していると伝えられている。
ハンガリーが反対していた欧州連合(EU)の支援案は合意に至った。
ただ、米国でバイデン政権のウクライナ支援案が議会の承認を得られるかは予断を許さない状況にある。
ロシアが望むような「戦勝」を得られるかは未知数だがゼレンスキー氏は対露交渉の可能性を、完全に否定している。
ウクライナ軍は現在、攻撃から防御に転じており、陣地を強化して攻撃する露軍の損害を拡大させる戦術に移行した。
軍事専門家の間では、双方とも相当期間は勝敗を決することができず、戦局は全体的に膠着状態が続くとの見方が強い。