北朝鮮のメディアとしては金正恩体制を支えるための報道管制を受けた情報統制の一環として活動している朝鮮中央テレビが有名だが、それ以外にも金、土、日のみ放送をしている龍南山(リョンナムサン)テレビ(旧開城テレビ)と万寿台(マンスデ)テレビが存在しており、中国や東欧の映画、ディズニーアニメなど海外のコンテンツが多く、市民の間で高い人気を誇るという。
ただ、後者が受信できるのはこれまで平壌周辺に限られていた。
北朝鮮当局は最近になって地方での受信を認めた。
北朝鮮に張り巡らした米国の諜報機関の情報網から黄海南道(ファンヘナムド)では万寿台テレビを見ようとしても電波が届かないため、ケーブルテレビで見るしかないものの、地元の逓信所(郵便局)には、生活が苦しいとの不満を口にするが、決して安くない料金を払って万寿台テレビを見ようとする人が数多く申込みに訪れているとの動きが伝えられた。
逓信所の職員からは北朝鮮政府から言われた仕事もこれだけ熱心にやれば
英雄メダル
がもらえるだろうにと嫌味を言うものの、人々は全く意に介さない様子という。
黄海道では龍南山テレビが映らないので、万寿台テレビを見ようとするのだという。
朝鮮中央テレビは、金正恩党委員長の偉大さを宣伝する番組が圧倒的に多い上に、金正恩体制を維持する報道が多く見られる御用放送や再放送ばかりでつまらないという。
これに対し、海外ニュースや外国映画を多く放送する万寿台テレビは人気があり、コメ200キロ分に相当する650元(約1万900円)もの設置費を払い、万寿台テレビを見ようとする人が多い。
それも北朝鮮ウォンではなく中国人民元での支払いが求められ外貨稼ぎの目論見もある。
情報筋が指摘しているように再放送が非常に多い。
両江道(リャンガンド)の情報筋からは「絶妙な料金設定」だと指摘。
密貿易や自由市場でモノを売って小金を稼ぎ「たんす預金」として貯め込んでいる外貨を狙ったうえで、北朝鮮の当局はこれぐらいの料金だったら、そこそこの暮らしをしている人が少し背伸びをすれば見られる料金にすることで視聴者を増やし、「みんな見ているのに自分だけ見ないのは恥ずかしい」と思わせれば、皆が見ようとするだろうと判断して決めたようで、外国映画の人気が日々高まっていることについても当局が理解しているということを意味しているという。
もともと、北朝鮮の人々は政府がコントロールしている銀行を信用していない。
このため、国内に流入した外貨を国庫に集めるため、当局はレストランなどで外貨を使わせるという方法を動員している。
ケーブルテレビもその一環という。
核兵器開発の影響から国際社会からの制裁で外貨不足に陥っている北朝鮮当局にとって、万寿台テレビはオイシい商売といえる。
ただ、これまで密かに見ていた外国映画を政府が公認したうえで、安心して見られる道を開くことで、逆に情報に対する欲求を増大させる両刃となる恐れがある。
北朝鮮当局は金正恩体制を揺るがす自由主義的な雰囲気を持つ韓流に対する取り締まりを強化しており、それが時には悲惨な結果をもたらしているといった情報も伝わっている。
それでも情報や娯楽に飢えている北朝鮮の人々はUSBメモリやマイクロSIMに保存された韓流ドラマ、映画、バラエティを楽しむ人が多い。
韓国の公共放送のKBSは、北朝鮮向けにアナログ中継を行っており、首都平壌を超えて、韓国から300キロも離れた平安北道(ピョンアンブクト)の雲山(ウンサン)でも受信できるとの情報もある。
万寿台テレビは1990年代、インド映画を放送して爆発的な人気を誇ったという。
こうした娯楽番組を改めて放送すれば、韓流に打ち勝ち、外貨を儲け、視聴者を喜ばせることにもなるとの動きもあるという。
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