サブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン関連証券の価値が下落する方向に賭ける投資を2007年に仕掛けた
スティーブ・アイズマン氏(52歳)
は、米国小型株運用に強みを持つ独立系資産運用会社
ニューバーガー・バーマン・グループ(設立1939年)
の富裕層顧客向け資産運用ビジネスで両親と再び仕事を始めた。
非公開情報であることを理由に関係者が匿名を条件にメディアの取材に対し語ったもの。
アイズマン氏はニューバーガー・バーマン傘下のアイズマン・グループにマネジングディレクターとして昨年9月に入社した。
富裕層向けの株式資産運用を手掛けるアイズマン・グループ(運用資産額8億1200万ドル=約966億円)は、アイズマン氏の両親であるエリオット、リリアン・アイズマン夫妻を含む複数のパートナーが運営している。
米国の投資会社オッペンハイマー・ホールディングスのブローカーだった両親は20年余り前にアイズマン氏が同社で金融の仕事に就く手助けをしたという。
その後、アイズマン氏は、ヘッジファンド
フロントポイント・パートナーズ(コネチカット州)
に移籍、米国のサブプライム住宅市場の崩壊を見越した投資を行い、多額の利益を稼ぎ出した。
この成功話はマイケル・ルイス氏の著作「ザ・ビッグ・ショート」(邦題:世紀の空売り
)が題材に取り上げ有名になった。
投資銀行モルガン・スタンレーは2006年にフロントポイントを4億ドルで買収した。
2010年7月に米国で成立した金融規制改革法に含まれる
ボルカー・ルール
は、銀行のプライベートエクイティ―やヘッジファンドへの投資を中核的自己資本(Tier1)の3%以下までに制限した。
2011年3月1日にフロントポイントはポートフォリオマネジャーと経営陣で過半数株式を保有し、モルガン・スタンレーは少数株式を保有する株主構成になり分離されている。
分離時のフロントポイントの運用資産は45億ドル(金融危機直前の2008年には100億ドル)で、インサイダー疑惑が2010年10月浮上した後、約35億ドルの資金が引き揚げられたという。
ひとこと
富裕層が先に不況期を脱するのは資金力の結果もあるが、先を読む力があるからに他ならない。
逆に、景気後退期には先を見る目がない富裕層は大きく資産を減らしかねない状況もあるだろう。