中国で今、富裕層の新たな「ぜいたく品」として母乳が注目を浴びている。
母乳を提供する「乳母」の派遣サービスまで登場する過熱ぶりだ。
ところが、成人の顧客も対象とした「乳母サービス」の存在が報じられるに至って、インターネット上では嫌悪や怒りの声が上がっている。
中国紙「南方都市報(Southern Metropolis Daily)」は4日、香港(Hong Kong)に隣接する南部の経済特区・深セン(Shenzhen)の家事代行スタッフ派遣会社「心馨語(Xinxinyu)」が、新生児だけでなく、病気などの理由で栄養価の高い乳製品を求める大人向けに母乳を提供する女性スタッフを派遣していると報じた。
心馨語の林軍(Lin Jun)社長は「大人の顧客も(派遣スタッフの)胸から直接、母乳を飲むことができる。恥ずかしければ搾乳器で搾ったものを飲むことも可能だ」と説明したという。
母乳提供スタッフの収入は、月額およそ1万6000元(約26万円)で、一般中国人の平均月収の4倍。スタッフが「健康で美人」なら、より高収入が見込めるという。
中国の一部地域では昔から、病人にとって母乳は消化が良く最も手軽な栄養源だと信じられてきた。
しかし、南方都市報の報道を受けて中国メディアやソーシャルサイト上では、大きな論争が起きている。倫理に反すると批判する意見が多い。
中国の作家・評論家の曹保印(Cao Baoyin)氏も、「女性を商品として扱っている点と、富裕層のモラル低下という点で、中国が抱える問題に拍車をかける事例だ」と自身のブログで同サービスを批判した。
深セン行政当局はAFPの取材に、心馨語は業務の定期点検を3年間怠ったなど複数の理由で事業認可を取り消され、現在は営業を停止していると説明した。
だが、母乳提供者の派遣サービスは当局の説明した認可取り消し理由には含まれていない。
オンライン世論調査によれば、心馨語のサービスについて「倫理観を損なっている」と答えた人は90%近くに上った。一方、10%強のネットユーザーは「通常の商行為」だと答えている。
中国では、育児休暇の短さや粉ミルクの販促が盛んなことなどを背景に、一般的に母乳で子供を育てる母親は少なく、2012年の国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)の報告によると28%に過ぎない。
ひとこと
何事も商売にしてしまう中国人であり、こうした商売も出てくる。
需要もあり、規模が拡大したのだろう。