米国政府はこれまでウクライナが持続的に要求してきた
長距離ミサイル
の提供を検討し始めた。
ウクライナのロシア越境攻撃後に戦況が変わった状況からの判断だ。
軍事専門家の間では
「ロシアが核兵器使用にまで言及」
する中でこうした西側の先端武器支援が「戦争をさらに複雑な局面に引き込みかねない」との懸念が出ている。
ロイター通信では3日、「米国とウクライナの間で長距離巡航ミサイルを提供する内容の交渉妥結が迫っており今秋に発表されるものとみられる」と伝えた。
これはウクライナ軍がロシア軍の隙を狙って致命的な長距離攻撃に出る可能性を意味する。
ロシアの一部地域とウクライナ東部地域に固着された戦場環境が急変する可能性が出てきた。
今回、米国が提供を検討している長距離ミサイルはF16戦闘機から発射する
AGM158統合空対地巡航ミサイル(JASSM)
が有力という。
現在ウクライナ軍は西側から支援されたF16戦闘機5機(1機は墜落)を運用中で、戦闘員の技術向上が時間経過とともに蓄積していくことも背景にある。
JASSMの射程距離は370キロメートルに達するが、射程距離を930キロメートルまで延ばした改良型(JASSM−ER)もある。
米国が提供を検討しているのは基本形と予想される。
これを配備すればロシア南西部の軍事基地とクリミア半島の海空軍基地に対する打撃が可能となり、ロシア軍からの無差別攻撃を防ぐ事もできる。
JASSMはステルス性能が優れており迎撃を避けられるという長所がある。
これまでウクライナは自国製ドローンを大挙投じてロシアへの攻撃を試みてきたが、
防空網
に阻まれ、飛行させる数に比べ大きな戦果が得られていない。
現在の戦線はロシアが攻勢中であるウクライナのドネツクと、ウクライナが進撃中のロシアの
クルスク
に分かれている。
ドネツク戦線ではロシア軍が占領を強化しているのに対し、クルスクではウクライナがロシア領の一部を占領した状況で、ウクライナ領土に侵攻しているロシア軍の戦力をクルスクに向かわせて剥がす作戦までの効果も見られていない。
これと関連し専門家らは「絶対兵力面で押されるウクライナが全般的に戦線維持に困難を経験している」と評価する。
ウクライナはこうした戦況を変えるために米国製先端武器でロシア本土を直接打撃できるようにしてほしいと要求している。
しかし、米国はロシアを刺激しないためにこれまで認めてこなかった。
場合によっては西側の長距離打撃武器提供を口実にロシアが
北大西洋条約機構(NATO)加盟国
に対して核攻撃を使った脅しを行うといった判断が背景にある。
ロシアは最近核兵器先制使用を含んだ「核ドクトリン」改正に出るだろうと西側を公開的に圧迫している。
4日にロシア大統領府のペスコフ報道官は「核ドクトリンを近く修正し公式化するだろう。これは西側の集団的行動の結だ」と話した。
2カ月先に迫った米大統領選挙も変数となり、専門家の間では「バイデン政権が大統領選挙に影響を及ぼしかねない長距離巡航ミサイルをウクライナに提供できるかは疑問」という見方が出ている。
こうした状況でウクライナのゼレンスキー大統領は再度西側に対する軍事支援を要請した。
今月末に米ニューヨークで開かれる国連総会で
ロシア本土急襲のような軍事戦略
を盛り込んだ計画を米国に伝える方針という。
これと関連し、ゼレンスキー大統領は3日にNBCとのインタビューで「占領したロシアの領土を維持するもので、これは勝利計画の核心」
としながら現在獲得したロシア領土を固守するだろうと主張した。
ウクライナは大反撃の準備を理由にステファニシナ副首相(欧州統合担当)ら内閣の半分以上を入れ替える作業も進行中という。
これに対し一部では「本来なら3月に実施すべきだった大統領選挙をせず執権を継続するゼレンスキー大統領に対するウクライナ国内の不満を外部にそらすための措置」という解釈がある。。