イランで昨年起きた
反政府抗議
にからみ、23日朝、西部ハマダンの刑務所内でイラン政府が
ミラド・ゾフレヴァンドさん(21)
を密かに死刑執行していたことが明らかになった。この事情に詳しい関係筋が匿名を条件にBBCペルシャ語に語った。
ミラド・ゾフレヴァンドさん(21)は23日朝、西部ハマダンの刑務所内で処刑されたという。
少数民族クルド系の人権団体「Hengaw」が、処刑の報告を受けたとしている。
イランの司法当局からは、この件についての発表はないものの、罪状としてはゾフレヴァンドさんは、抗議活動中にイラン革命防衛隊の隊員1人を殺害したとして、有罪判決を受けていたもの。
なお、情報筋によると、ゾフレヴァンドさんは勾留中から裁判に至るまで、弁護士との接触を拒否されていた。
今回のゾフレヴァンドさんの処刑が確認された場合、昨年の抗議運動以降に処刑されたのは計8人となる。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は最近の報告書で、これまでの7件の死刑執行についての情報が、「司法プロセスが、適正な手続きと公正な裁判の要件を満たしていないことを示している」と警告していたが、いくら警告をしても聞く耳を持たない相手に対しては単なるリップサービスでしかなく、国連自体の存在意義がないともいえる。
また、「適切かつ時宜にかなった法的代理人との接触はしばしば拒否され、拷問の結果得られたかもしれない自白の強要も報告されており、旧ソ連自体に行われた密告を単著として反政府活動が拷問等にる罪状のでっちあげと等しいもので、処刑という結果ありきの恐怖政治でしかない。
イランでは昨年9月、髪の毛を覆うよう女性に義務づけた法律に違反したとして、クルド系女性の
マサ・アミニさん(22)
が道徳警察に逮捕され、その後、警察の自白強要などを目的とした暴行等が原因で死亡した。
これを受け、イラン各地で反政府デモが活発化したが、当局は抗議参加者を「暴徒」として暴力的に弾圧し数百人が殺害され、数千人が拘束された。
ゾフレヴァンドさんは23日未明に、ハマダン中央刑務所で処刑されたが、ゾフレヴァンドさんの遺体はこの日の午後まで遺族に引き渡されなかったという。
人権団体「Hengaw」は声明で、ゾフレヴァンドさんは処刑が間近に迫っていることも知らされておらず、家族との最終的な面会も認められていないと明らかにした。
また、この処刑は「生命に対する権利を侵害するだけでなく、被拘束者とその家族の人権を著しく侵害するものだ」と強く非難したうえ、イランにおける軍事、政治、経済の主要勢力である革命防衛隊が、死刑を執行するよう当局に圧力をかけたと主張した。
また、処刑は、ゾフレヴァンドさんが殺害したとされる将校の遺族の明確な同意なしに行われたという。
ハマダンの検察当局は先週、最高裁判所支部が、革命防衛隊の情報部員アリ・ナザリ氏殺害の罪で有罪判決を受けた被告に下された死刑判決を確定したと発表していた。
当局ではこの被告を特定しないまま発表したが、人権弁護団体「ダドバン」は関係筋の話として、これがゾフレヴァンドさんだと指摘していた。また、ゾフレヴァンドさんの家族に、ゾフレヴァンドさんの件を公表しないよう政府筋から圧力がかかっていたと報告した。
ナザリ氏は昨年10月、ハマダンのマライエル大学医学部で学生たちが行っていたデモに対処していた際、マスクをかぶった男5人に撃たれて死亡した。
検察は、ゾフレヴァンドさんがこのうちの1人だとして追及していたと報じられている。
イスラム原理主義国家のイランでは、年間の死刑執行数は、少数眠蔵の同化政策を強力に推し進める独裁者習近平が率いる中国に次いで世界で2番目に多い。
グテーレス国連事務総長の報告書は、イランは「非常に気がかりな速度で」死刑を執行しており、今年は7月までにで少なくとも419人を死刑にしたと指摘した。
これは2022年の同時期と比べ、30%増加している。
ひとこと
恐怖による支配であり、末期的状態だ。